View More

Interview

MATCH Leather Works

「湖国の赤の美しさ」を語り継ぐ

MATCH Leather Worksのはじまり

滋賀県長浜市を拠点に革細工を製作する工房、MATCH Leather Works。
元々は、タンナー(皮を革に加工する専門業者)から仕入れた革で一般的な革小物を製作する普通の革細工屋からスタートしました。

ある時、近隣の大工や工務店の方々との会話を通じて、地域に伝わる家屋のべんがら塗りが途絶えつつあることを知りました。べんがら塗りの赤い街並みで育った自分にとって、街の原風景が失われるように感じ、「革にべんがらを取り入れられないか」と考えるようになりました。

その後、研究開発を進め、べんがらと柿渋を塗布する長濱レザーを開発しました。家として伝統的な風習を残せないのであれば、それを手回り品の革製品に昇華させることで、地域の風習を形にしようと製作を開始したのがきっかけとなりました。


長濱レザー製作のこだわり

・材料

当工房では、主に国産の牛革や国内タンナーの革を使用しています。何よりもまず日本が元気であってほしいという思いから、国内産の革を重視しています。イタリアンレザーは世界的に有名でブランディング力も強いですが、国内タンナーも非常に高品質な革を作っています。国内産の革の良さはぜひ知っていただきたいと考えています。

また、当工房が製作する長濱レザーにも特別な魅力があります。べんがらと柿渋を使用した長濱レザーは、抗菌作用があり、カビに強い特性を持っています。さらに、べんがらの隠蔽力により水染みが目立たず、柿渋の強い塗膜は小さな傷にも強く、長く安心して使用できます。この革の優れた特性を多くの方に知っていただきたいと思っています。

 

・デザイン

「奇抜なデザインは用いない」という点にこだわっています。基本的には質実剛健で、飽きの来ないデザインを大切にしています。飽きた瞬間、長期間使い続けることが難しくなるため、私たちのコンセプトは、使いやすく、機能美としてのデザインがあり、10年以上使っていただけるようなアイテムを提供します。

何よりもまずは使いやすさを最優先し、王道のデザインに囚われず、柔軟な発想で製作しています。


製品づくりで最も大切なところ

最も大切なのは、何を差し置いても丁寧に、手を抜かずに使う方のことを考えて製作することです。 革製作は地味な作業の繰り返しであり、忍耐力が求められます。

特に弊工房では全て手縫い・手仕上げで行っており、少しの気の緩みがアイテムに大きく反映されてしまいます。 手に取っていただいた方が、10年後も安心して使い続けていただけるよう、一つ一つ丁寧に取り組んでいます。長年製作をしていると、こうした当たり前のことが意識から外れがちですが、それでは真っ当なアイテムを作ることはできません。


製品開発の困難

長濱レザー製作において最も重要なのは、いかにべんがらを革に定着させるかという点に尽きます。

べんがらは非常に粒子の細かい粉末で、ただ塗るだけでは乾燥後に簡単に剥がれてしまいます。さらに衣服などに付着すると繊維に食い込み、取り除くことは困難です。この特性を活かして布のべんがら染めができる一方で、革には別のアプローチが必要でした。

水溶きで塗布し、乾性油で磨く木材の手法は革には適しません。そこで、溶き剤や上塗り剤に適したものを見つけるため、幾度となく実験を繰り返しました。失敗してべんがらで作業場を赤く染めた日もありましたが、その結果、扱いやすさや仕上がりの雰囲気、入手性の良さを兼ね備えた柿渋に行きつきました。


日々の製作活動

・やりがい

昔お求めいただいたお客様が再びお店にいらっしゃるとき、製品をお見せいただくことがあります。 その時のエイジング具合からどのように大切に使われてきたかが伝わってきます。それらの作品達から持ち主の愛情が感じられ、本当に嬉しそうにしているように私には見えます。

長くその方の相棒であって欲しい、と願う想いが成就したようで、本当に幸せな気持ちになれます。

 

・印象に残る作品

長濱レザーを使ったペストマスクは、私にとって特に印象に残る作品です。
地域の風習を活かした革作家としての一面に加え、マスク作家としての活動もしており、その両方を活かしてペストマスクを製作しました。

このマスクをふるさと納税の返礼品として登録したところ、大きな反響をいただき、Webニュースでも取り上げていただきました。実際に返礼品としてご指名くださる方が増え、非常にありがたいことに感じています。

 

・新たなチャレンジ

大変個人的な嗜好ではありますが、特にハンチング帽が好きで、革製のハンチングを作りたいと考えています。薄手の革にべんがらを塗布するという新たな挑戦が待っており、皆様にべんがらの魅力を知っていただけるよう取り組んでまいります。


伝えたいメッセージ

私の生まれ故郷、長浜の街並みの色合いを、べんがらと柿渋の組み合わせの美しさを通じて、再発見してもらいたいです。特に若い世代に知っていただきたいと思います。多くの工務店や大工の方々が、10年後にはべんがら塗りの家が消えてしまうと言う未来の中で、もし叶えば赤塗りの家を建てる方が出てくれば大変に嬉しく思います。例え家としてその美しさを保てずとも、その美しさを手回り品として、湖国の赤の美しさを長く語り継ぐことができれば、とても嬉しく思います。


これからどんな狼煙をあげていきますか?

昨今は消費の時代です。流行を消費しモノを消費していく社会ですが、その中で長く愛するモノと出会い、10年、20年と人生を共に過ごせる社会であって欲しいです。その一端を担える信頼出来る革職人であれるように、自分の腕を磨き続けます。 美しい木目を模したべんがら塗りの革。 この弊工房独自の革を日本で、世界で、たくさんの方に愛してもらいたい。 そして、滋賀長浜の美しい赤の街並みが、いつかまた復活する日まで、革とべんがらに向き合い続けます。


記事協力企業

本記事は、【MATCH Leather Works】のご協力のもと作成いたしました。

▼MATCH Leather Works公式HPはこちら


日本文化継承プロジェクト狼煙 -NOROSHI-

狼煙 -NOROSHI- は、日本文化の魅力を発信し、次世代へと継承していく取り組みを続けています。
また、日本の伝統工芸品の魅力を伝えるため、無料で記事作成を行っています。

 

「もっと多くの人に伝えたいことがある」
「日本文化を広める手伝いをしてほしい」
そんな想いをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください!

📩 お問い合わせはこちら