Interview
有限会社南條工房
京都で創業してから200年余り。
仏具として使われるおりんの制作を行ってきた「南條工房」。
究極の音色を響かせることに向き合い、時に非効率なことも受け入れながら、素材や工法など製造のすべてを設計してきました。長い年月をかけて培ってきた技術や知恵を尊びながら、新しいものづくりに励んでいます。
暮らしの中で、もっとおりんに触れてほしい。
そんな想いから「LinNe」は誕生しました。
南條工房は、200年近い歴史を誇ります。
中国から伝わった仏教文化が、江戸時代にお寺で仏様を拝む習慣を家庭内に取り入れる形で仏壇が誕生したと言われています。この背景から多くの需要が生まれ、京都の寺文化のもとで南條工房は創業されたと考えられています。
伝統的な薪を使った焼型鋳造法による「佐波理(さはり)」製のおりん・祇園祭や各地の・ 鳴物神仏具(なりものしんぶつぐ)を専門に製造している国内でも数少ない工房です。
「天保十年南條勘三郎作」と銘が入った囃子鉦(ばやしがね)※1が残っていることは、南條工房にとって最も重要な記録の一つです。この囃子鉦(ばやしがね)が、祇園祭の山鉾(やまぼこ)※2の一つである「大船鉾(おおふねほこ)」※3の復興のきっかけとなりました。
【用語解説】
※1【囃子鉦(ばやしがね)】:祭りや伝統芸能で使われる小型の銅鑼(ドラ)。「チン」「カン」など高い音でリズムをとる打楽器で、囃子(はやし)の中で重要な役割を持つ。
※2【山鉾(やまぼこ)】:京都・祇園祭などで使われる、豪華に装飾された曳山(ひきやま)。「山(やま)」と「鉾(ほこ)」の2種類があり、それぞれ地域の守り神を祀る意味合いを持つ。
※3【大船鉾(おおふねほこ)】:祇園祭の山鉾のひとつ。かつて幕末の火災で焼失したが、2014年に約150年ぶりに復興を果たした。船をかたどった形状が特徴です。
時代や文化が変化する中で、目的や用途が少しずつ変わっていくことがあります。それでも、人々の心に響く音色を作り続け、その音色が人々の役に立つことができる喜びこそが、最大の誇りです。
佐波理は、古くは正倉院の宝物にも使用されている青銅の一種で、銅と錫の合金です。一般的なおりんに使われる金属よりも非常に硬いため、響きが良く澄み切った美しい音色を奏でます。
南條工房では、5代目の時により硬くなる配合比率を研究し、独自の配合で作られる佐波理製のおりんを制作しています。この配合の佐波理は、焼型鋳造という伝統的な工法でしか実現できないとされています。
金属素材と、その素材を形作るための伝統的な工法です。
七代目 南條勘三郎のもと、型作りから完成まで一貫して一つ一つ手作りで製造しています。
響きと音色が良いため、「響銅」とも呼ばれています。古くから、佐波理の音色には魔を払い浄める力があると信じられてきました。
真鍮のような銅合金は強い力を加えると曲がりますが、佐波理は曲がらずに折れる特徴があります。その硬さにより、振動しやすく、音の余韻が長く響きます。錫の配合量を限界近くまで高めた佐波理は、焼型鋳造法でしか鋳造できません。
この方法は、弥生時代の銅鐸(どうたく)などの製法と同様の技法を使用して鋳型を作ります。土と粘土をこねて鋳型を作り、薪で素焼きした後に鋳込む※1ことで、鋳造が難しい佐波理の成型を可能にしています。
※1【鋳込む(いこむ)】:とかした金属を鋳型に流し込むこと。
1つのおりんは、代々何十年にもわたって使われることがあります。時には、工房に磨き直しのために50年以上前に作られたものが戻ってくることもあります。それらは先代やさらに前の職人たちが作ったもので、今も美しい音色を奏で、世代を超えて大切に使われています。
作り手として、それは非常に大きな喜びであり、同時に責任を感じる瞬間でもあります。そして、より良いものを次の世代に残していきたいという強い意欲へとつながっています。
LinNeというブランドを立ち上げてから、日本や仏教という枠を超えて私たちのつくる音色に興味を持ってくれる人が増えました。たくさんの人に音色を知ってもらうことで、新たな音色の可能性を感じています。
これからも、人々の声を聞き、心に寄り添う音色を届けることで、その可能性を追求していきたいと思っています。
本記事は、【有限会社南條工房】のご協力のもと作成いたしました。
▼有限会社南條工房公式HPはこちら
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